【創作BL】恋人への立候補【#001】


「俺、透さんの恋人に立候補していいですか…!?」

早朝のマンションのゴミ捨て場でその声は響いた。
透と呼ばれた男は、一瞬の間を開けたあと、柔らかく微笑む。
「陽翔くんと私とじゃ、歳が離れすぎてるよ」
やんわりとした言い方は拒否を示しているのだろうか。
しかし陽翔はここで引き下がるわけにはいかなかった。

陽翔がこのマンションに、姉と共に引っ越してきたのは今年の春のことだ。
それからもうすぐ1年が経とうとしている。
その1年のほぼ全ての期間、陽翔はこの透という男に恋焦がれてきた。
隣に住む年齢不詳のこのサラリーマンに。

歳が離れすぎていると言われても、陽翔は透の年齢を知らない。
けれど、恋愛に年齢など関係ないと思った。

「と、歳なんて、関係ありません!俺、もっと魅力的な男になるので、待っててください!」
こうして陽翔が透にはっきりとしたアプローチをするのは初めてだった。
これまで、笑顔で挨拶をしてみたり、何かにつけてお裾分けをしてみたりしたものの、陽翔の好意は透に伝わっている気配がなかったからだ。

「ありがとう、楽しみにしておくね」
そういった透は変わらず優しい笑みを湛えている。
全くこちらの熱意が伝わっていないのがわかり、陽翔は肩を落とした。

「ほら、陽翔くん、急がないと学校遅刻しちゃうんじゃない?」
「あ!そうだった!」
透の言葉にハッとして、陽翔は手にしていたゴミ袋をゴミ捨て場に投げると、透に頭を下げた。
「それじゃあ透さん、行ってきます!透さんもお気をつけて!」
「あ、待って、陽翔くん」
透が陽翔に近づく。
そっと伸ばした透の手が、陽翔の側頭部に触れた。
「へ!?」
「寝癖、ついてるよ」
顔に火がつくように熱くなる。
透の手が、陽翔の寝癖を直すように優しく頭を撫でた。
「あ…ありがとうございます…」
透の顔が見れない。恥ずかしさに、穴があったら入りたい気持ちがする。

「学校に行く前でよかったね」
そう慰めてくれたが、透に見られたことが何より不運なことだった。

桃瀬薫
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