【創作BL】受け入れられない距離【#013】
「中原」
蓮が教室へと戻って行った後、背後から湊はすぐに声をかけられた。
「あ…佐伯」
振り返ると、佐伯というクラスメイトが湊を威圧するように立っている。
「相変わらず、仲、良さそうだな、五十嵐と」
「それは…幼馴染、だから」
「ふーん。それだけなのかなぁ」
ニタニタと笑うその笑みに湊は不快感を感じていた。
彼の舐めるような視線は嫌悪感しか感じない。
「中原、本当は五十嵐のこと“そういう目”で見てたりして…」
佐伯の突然の発言に、湊は目を見開いた。
同時に、手足の先が一気に冷える感覚がする。
「お、図星?やっぱりな。そうなんじゃないかって、俺らで話してたんだよ。なぁ?」
佐伯の後ろにいた数名の男子生徒も、同じような不快な笑みを湛えていた。
「本人にバレたら、どうなるだろうな?いや、それより学校中にバレる方が、面白いかな?」
佐伯は一歩、湊へと近づいた。
生理的に嫌悪感を感じ、それ以上自分の領域に入れたくないと本能的に思ってしまう。
湊は佐伯が近づいた一歩分、後ずさった。
しかしすぐ後ろには机があり、これ以上距離を取ることができない。
「なんか言えよ」
ずんずんと近づいてくる佐伯から、湊は顔を背けた。
「周りにいうのは…やめてほしい」
本当は、反論すれば良かったのかも知れない。
──蓮のことをそういう目では見ていない、と。
けれど…うまく嘘をつける自信がなかったし、蓮への好意を否定する自分にはなりたくなかった。
「じゃあ俺らのいうこと聞けるよな?湊くん」
佐伯は後ろにいた輩からノートを受け取ると、それを湊に押し付けた。
「いつものこれ、俺らの分もよろしくな?」
湊は、それを受け取るしか選択肢がなかった。
何より拒否をすることで、蓮に迷惑がかかることだけは避けたかった。
自分がこれを我慢すれば…
そうすることで全てが穏便に済むのであれば、
こんなこと、なんでもないと思った。
「わかった…」
縮められた佐伯との距離を離したくて、湊はノートを抱え自分の席へと戻る。
自席の机にノートを置くと、そのノートすら汚れているように感じて、手を洗いたい衝動に駆られた。