【創作BL】いつも通り【#012】
そんなこんなで、蓮と湊の交際はスタートしたのだが、
これと言ってこれまでと何かが劇的に変わることもなく…
「みーなと♡」
「蓮、近い」
「また教科書忘れちゃった♡貸して♡」
蓮は相変わらずだった。
「付き合う」となると何やら大それたことのようでドギマギとしていた湊だったが、変わらない蓮の態度に安心して湊も今まで通りに振る舞うことができた。
「お前、教科書わざと忘れてるだろ…」
背後から抱きついてくる蓮に湊は呆れて言った。
それでも蓮の調子は変わらない。
「今日は一緒に帰れる?」
「話聞けよ…」
「駅前のクレープ屋さん、限定メニューが出たんだって!食べに行こ♡」
教室には他にも生徒がいると言うのに、蓮はぎゅーと湊を抱きしめる。
蓮の体温を感じると、先日の踊り場でのキスが思い出されて、湊の顔に熱が昇りそうだった。
「い、いいけど…なんでそんな嬉しそうなんだ?」
蓮の声のトーンがいつもより高い気がして、疑問を感じた。
「ん?なんでだと思う?」
「良いことでも…あったのか?」
問いかける湊に、蓮は「んー」と考える様子を見せた。
少し経って、蓮は湊の耳元に口を寄せて、小声で囁いた。
「好きな人が恋人になってくれたから♡」
そう言われ、湊はいよいよ赤面し始めた。
こんな教室で、一人赤面していたら、他のクラスメイトにどんな噂をたてられるかわからない。
湊は深く息を吸い、平常心を取り戻そうとする。
けれど、蓮の言葉に喜んでしまう自分がいるのは紛れもない事実だった。
「そ、そうか…俺も…」
「ん?」
「俺も…嬉しい」
「湊…」
小声で返答した湊の声は蓮にしっかり届いたようで、蓮の湊を抱く両腕に力が籠るのがわかった。
「蓮…近いって。きょ、教科書な。取ってくるから離れろ」
蓮の両腕を外そうと試みるも、微動だにしない。
おまけに、蓮からリアクションもない。
「蓮?」
問いかける湊の耳に、蓮の吐息がかかる。
「湊、キスしていい?」
蓮の突然の申し出に、湊は内心ひっくり返りそうな気持ちになっていた。
「ダメに決まってんだろ」
即座に湊は反対した。
「えー!なんで!!」
「前にも言ったけど、そういうのは教室でやることじゃないだろ…」
教室には他の生徒も多くいて賑わっていた。
しかしそれ以前に、学校は健全な場所という印象を強く持っている湊は、学校でのスキンシップはいけないもののような気がしていたのだ。
「でも湊、俺の部屋には来てくれないんでしょ?」
「…れ、蓮の部屋なら…いい」
蓮の部屋なら、クラスメイトに見られるのではないかとヒヤヒヤする必要もない。
手を繋いだり、こうしてハグするだけでもかなり周りの目を気にしている湊は、蓮の部屋ならいいかと思ったのだ。
「湊…それ、わざと言ってる?」
「なんだよ、わざとって。だって蓮の部屋の方が都合いいだろ?」
おまけに、湊の家は母親がいつ帰ってくるかわからないため、蓮をあげることはできなかった。
蓮と遊んでいると知れたら、母親は何を言ってくるかわからない。
(キーンコーンカーンコーン)
「ほ、ほら、予鈴なったぞ。教室戻れよ」
そう言って蓮の拘束からなんとか逃れると、蓮は大きなため息をついた。
「放課後、覚悟しといてね」
「な、何?覚悟って」
「湊にはちょっと、色々教えないとダメだね」
「俺、授業でわからないとこなんてないぞ」
「そう言うところだよ…湊…」
湊は首を傾げたが、蓮はますますため息をつくばかりだった。