【創作BL】震える吐息と甘い温もり【#010】

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蓮が湊を抱えたまま向かったのは、人気のない階段の踊り場だった。
屋上は閉鎖されており、この踊り場に近づく生徒はいない。
「蓮、どうしたの、こんなとこ連れてきて…」
蓮は湊をゆっくりとおろすと、階段に腰掛けた。
「誰にも、邪魔されたくなかったから」
そう言って蓮は自分の隣に座るように湊を促した。
正直に自分の気持ちを吐露してしまった手前、湊は蓮にどんな表情で接すればいいか分からずにいた。
蓮はやはり、自分が「手を繋ぎたい」と言ってしまったことを気持ち悪く思っているのではないだろうか…
「湊、手、出して」
突然、蓮は自分の手を差し出しながら言った。
「手?」
訳も分からないまま、湊は自分の右手を蓮に差し出すと、蓮はその手をそっと優しく握った。
冷たくなっていた湊の手とは対照的に温かく大きな手。
「俺の手は、湊のものだよ。繋ぎたい時にいつでも繋いでいい」
蓮は繋いだ手に力を込めた。
逞しく頼り甲斐のありそうな大きな手が、湊の小さく冷たい手を包んでいる。
蓮と手を繋ぐなんて、何年ぶりだろうか。
もうあの頃とは違う彼に、湊の心臓は高鳴った。
蓮の顔を覗き見ると、ただ真っ直ぐに湊を見つめていた。
射抜かれそうな視線に、目が、逸らせなくなる。
「それと…」
と、蓮は言いかけ、繋いだ手を引いた。
引っ張られた湊はバランスを崩し、蓮に倒れ込む。
すると蓮の逞しい胸板をワイシャツの上から感じる。途端、蓮の香りと体温を肌で感じ、脳の奥がジンと麻痺するような錯覚に陥る。
「れ、蓮…?」
「この身体も、これで湊のものになった。俺がハグするのは今までもこれからも湊だけ」
「な、何?どういうこと…?」
蓮の真意を知りたいような、でもまさか、そんな…
湊の頭の中はどうしても都合のいいように想像してしまう。
蓮も自分と同じように考えてくれている…?
「湊、大好きだよ。湊が手を繋ぎたいって思ってくれてるみたいに、俺もずっと、湊に触れたかった」
「…ほんと?」
「ほんとだよ」
蓮の声は優しく、甘く響く。
「湊、俺の全部を独り占めしたいって、言ってくれたよね」
「う、うん。…独り占めしたい」
「その言葉が聞けて、本当に嬉しかった」
蓮は、両腕にさらに力を込め、湊を強く抱いた。
「俺の全部を湊にあげるね。だから…たくさん独り占めして?」
湊の心臓はこの上ないくらい早鐘を打っていた。
きっとこの鼓動は蓮にも伝わっているはずだ。だって、こんなにくっついているのだから。
そして同時に、蓮の力強い鼓動も、湊は感じていた。
蓮はそっと湊を離すと鼻先同士がくっつきそうな距離に顔を近づけた。
「その代わり、俺も湊を独り占めしたい。いい…?」
蓮が囁いた。
蓮は自分に、この手もこの身体もくれると言ってくれた。
湊はその思いに応えたかった。
何より、自分の全てを彼にあげたい。その思いが止まらない。
「れ、蓮に…任せる」
なんて言っていいのか分からないまま、湊は返答した。
すると蓮は「わかった」とだけいうと、両手で湊の頬を包んだ。
「しても…いい?」
熱を帯びた蓮の瞳が、自分の唇を見つめているとわかった。
湊はぎゅっと目を瞑るとこくりと小さく頷いた。
それはほんの一瞬のこと。
柔らかく温かい蓮の唇が、湊の唇に触れた。
ちゅ、と軽く啄むように音を立て離れる。
無意識に息を止めていたのかもしれない。
湊は胸に詰まっていた震える吐息を漏らした。
蓮は嬉しそうに微笑んでいる。
それだけで、湊も心がポカポカと温かくなった。
「大好きだよ、湊」
蓮は再び湊を抱きしめると、言い聞かせるように何度も大好きだと繰り返した。
湊はあぁ、これが「好き」なんだなぁ、と実感した。
「俺も…」
もう今なら怖くない。
「俺も…蓮が好きだ」
ずっとこうしていたい、時が止まればいいのに
そう湊は強く思ったのだった。