【創作BL】視線の先には。【#009】

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「じゃあ放課後、ゲーセン一緒に行かない?マリオカートで勝負しようよ!」
明るく言う蓮の顔を湊は見れずにいた。
蓮と二人きりになるのに抵抗を感じる。
再び「付き合ってほしい」と言われた時、どう断って良いのかわからなかった。
「あ…ごめん、放課後は委員会があるから…」
嘘をつくのは苦手だ。けれど今は、二人きりになりたくない。
「あ、そうなの?わかった」
蓮は信じてくれたみたいだった。
それからと言うもの、湊は蓮を避けるようになった。
昼食を食べようと声をかけられても、教科書を貸してくれと声をかけられても、
何かと理由をつけて湊は断った。
少し時間がほしかった。
「付き合って」と言われて、勢いやノリでオッケーするのはとても不誠実だと思う。
時代は変わり、同性同士のカップルも増えたという。
けれど、この「学校」という閉鎖的な環境で、自分たちが付き合っているということが公になったとしたら、
蓮が嫌な思いをすることになるかもしれない。せっかく友人も多いのに、大切な高校生活を自分のせいで暗いものにしたくなかった。
自分たち二人の関係は今がベストなはず。断るのが最良の選択だとわかっている。
なのにそれをすぐに選べない自分は、一体何を考えているんだろう。
***
ある日の昼休み、憂鬱な気持ちでふと窓の外を眺めると、パッと心に灯りが灯った。校庭に蓮がいる。まばゆい金髪は存在感があり、どこにいても彼だとわかってしまう。
どうやら友人とサッカーをしているようだ。
少人数でのサッカーは展開が早く、蓮が素早くゴールにボールを入れるところが見られた。
すると一緒にサッカーをしていた男子が蓮に駆け寄り、頭をくしゃくしゃに撫でていた。
かと思えば、他にいた男子が、蓮の背中におぶさりはしゃいでいた。
なんてことない、男子高校生の戯れ。
頭の中では理解している、なんてことない、よくある光景じゃないか。
なのに…心がくさくさしてしまう。
蓮の頭を撫でていいのは自分なのだと。
蓮に親しげに触れて良いのは自分だけなのだと。
いやいや、と湊は頭を振った。
相手は男子だ。ただの友達だ。
なのにどうして、こんなに動揺するんだろう。
どうして、こんなにムカムカとするんだろう。
湊は窓から乗り出すように蓮やその周辺の男子たちを見つめた。
(特別なのは、俺だけだろ?…蓮)
ふと、金髪の幼馴染が顔を上げた。
まるで呼びかけが聞こえてしまったのかと思ったほどだ。
蓮は校庭から真っ直ぐに湊の方を向いている。
いや、顔までは見えるはずがない。
窓から視線を送っているのが自分だなんて、蓮に、わかるわけがない。
けれど立ち止まって微動だにしない金髪の彼は真っ直ぐにこちらを見やったかと思うと、
周辺の男子たちに軽く声をかけ、その場から立ち去った。
(どこにいくんだろう…)
昼休みはまだ始まったばかりだ。
蓮がいない時間の潰し方がわからない。
蓮がいなくなり、湊の心に再び憂鬱が忍び寄ってきた。
すると…
「湊」
窓の外を眺めていた湊は背後から声をかけられた。
そこには、息を切らした、蓮がいた。
「湊、今ちょっと話せる?」
校庭から走ってきたのだろうか。額にはうっすら汗が滲んでいる。
「れ、蓮…あの…ちょっと、今は、忙しい」
苦しい言い訳だった。
ぼんやり窓の外を眺めていたのに、何が忙しいというのだろう。
蓮は息を整えると、真っ直ぐに湊を見つめた。
「ずっと俺のこと避けるつもり?」
その声は教室にいる他の学生にも聞こえてしまったのではないだろうか。
弁当を食べていたであろうクラスメイトがチラと視線を投げてきた。
「べ…別に、避けてないけど…」
視線が気になり、湊は小声になった。
「嘘。この間から様子おかしいもん」
それでも蓮は周りなど気にする様子もなく続ける。
「避ける理由、教えてくれない?」
蓮は決して怒った風ではなかった、が、少し切羽詰まったような声で、珍しさを感じる。
自分のことでこんな風に焦ってくれる彼に湊は微かな喜びを感じてしまった。
そして即座に、それがどれほど自分勝手なものかと反省する。
「本当に、ただ、最近はちょっと忙しいだけ…」
「本当に?」
「…うん」
沈黙が流れた。
クラスで昼食をとっている少数のクラスメイトは、自分たちが喧嘩しているわけではないとわかると、再び自分たちの昼食に集中し始めた。
湊は蓮の顔を見れないでいた。
その辺の床のタイルの溝を眺めていると、蓮はそっと、両手で湊の顔を包み上向かせた。
「嘘でしょ」
「え?」
強制的に蓮の方を向くようにさせられた顔をどうして良いかわからず、視線だけがウロウロと彷徨ってしまった。
「嘘、ついてるでしょ」
「嘘なんて…」
「湊、嘘つく時目合わないもん、昔から」
「それは、たまたまだろ」
「じゃあちゃんと目合わせて」
そう言われても、湊はやはり、目を合わせることができなかった。
「やっぱりね。なんで嘘つくの?」
言っても良いんだろうか、本当のことを。
自分が、こんなに醜く浅ましい人間だということを。
言ったら蓮は、自分を嫌いになってしまうだろうか。
けれど、他の友人を置いて走って来てくれた彼になら、
本当のことを言っても良いのかもしれないと思った。
何より、幼馴染なのだから、
本当の気持ちをもう隠してはおけない。
「蓮が…俺に冗談ばっかり言うから…」
そう、もういつからだったろうか。とっくの昔からだったと思う。
「俺…蓮のこと、もう友達として…見れない…」
湊の告白に、しばしの沈黙が流れた。
「俺のこと、嫌になっちゃった?」
「…違う…逆、だよ」
「逆?」
「手、繋ぎたいって…思っちゃうんだ」
今こうして話してる時ですら。
「それだけじゃない…もっと、そばにいたいって…蓮の全部を、独り占めしたいって…」
蓮の甘い言葉も、笑顔も、特別なことは俺だけにしてほしいって。
「だから、避けてた…」
湊は逸らしていた視線を蓮の目に向けた。
蓮の視線と湊の視線が絡む。
「蓮こそ、俺のこと…嫌いになる…?」
すると蓮は大きくため息をついた。
そのため息に、湊は言わなきゃよかったかもと後悔したが…
「…湊が悪いんだよ。」
「え…?」
「そんなん言われたら、もう、我慢できない」
蓮が近寄ったかと思った瞬間、湊の体が浮いた。
蓮の両腕に抱えられ、湊はお姫様抱っこされていたのだ。
「うわっ!え!?」
「このまま攫っちゃうけど…いいよね?湊」
クラスメイトの視線など、どうでも良いというように、湊を抱き抱えた蓮は颯爽と教室を出た。