「じゃあ放課後、ゲーセン一緒に行かない?マリオカートで勝負しようよ!」明るく言う蓮の顔を湊は見れずにいた。蓮と二人きりになるのに抵抗を感じる。再び「付き合ってほしい」と言われた時、どう断って良いのかわからなかった。「あ…ごめん、放課後は委員会があるから…」嘘をつくのは苦手だ。けれど今は、二人きりにな…
「あのね、蓮くん。私と付き合ってほしいの!」教室の中で響く声を、湊は廊下で聞いていた。同じクラスの女子が告白している。ただそれだけなら、湊も気を利かせて教室の前から立ち去ったかもしれない。けれど、盗み聞きなどよくないとわかっていても、どうしても立ち去ることができなかった。蓮が告白されている。今どんな…
体温計は、平熱を示していた。こんなに熱や動悸を感じているのに平熱なんて、体温計がおかしいのでは?と湊は養護教諭に訴えたが、聞き入ってもらえなかった。そのまま教室に戻るよう促され、湊はおとなしく保健室を出た。教室までの廊下を歩く間、蓮のセリフが何度も頭の中を反芻する。──俺と付き合って。蓮の真っ直ぐな…
立ち上がった湊の腕を、蓮の大きな手が掴んだ。「行かないで、お願い」懇願する切ない声音がずるい。教室を出ようとする足が重くなった。「でも…授業だから」「俺と、どっちが大事…?」「そんなこと…言うなよ…」どっちが大事、とかではないのだ。蓮が大事だからこそ、一緒にいるために授業に出席しなければならない。授…
「湊、この教室にしよ」蓮は誰もいない教室を見つけたらしく、こっちこっちと湊に手招きしている。「もう少ししたら誰か来るんじゃないか?」「この教室、心理学の授業でしか使われてないから。それと、吹奏楽部の練習」「蓮、詳しいんだな」「あれ、忘れてた?俺1年の時吹奏楽部入ってたもん」蓮は誇らしそうに言った。そ…
渡り廊下で繋がれたA棟とB棟の間に、裏庭はあった。学生の大半は食堂に行くか、教室で昼食を取るため、裏庭は大抵空いている。湊と蓮は奥まったところにあるベンチに腰掛け、少し体を震わせた。「あれ、思ったより冷えるね」蓮は両腕をさすった。確かに、この時期にしては少し冷える。お昼時の日差しによって、多少暖かさ…
「湊、お昼ご飯一緒に食べよ〜」隣のクラスから蓮がやってきた。蓮と湊が一緒にお昼を食べるのは最早当たり前になっている。食堂で待ち合わせてもいいものの、こうして毎日自分の教室まで来てくれる彼が愛おしかった。しかし、周りの視線も若干気になる。クラスでは浮いた存在の湊は自身の肩身の狭さを十分自覚していた。対…
「結構並んだね、クレープ」蓮は両手にクレープを持ったまま、近場のベンチに腰掛けた。蓮に続くように、湊もベンチに腰掛ける。キッチンカーのクレープ屋さんは、最近になって駅前によく出没するようになった。そこから漂う甘い香りは、道ゆく人の足を止めた。「はい、こっちが湊のだよね。ぱっしょんチョコレート」「ん、…
「はぁ・・・」 湊は思わずため息をついた。 学級委員の仕事を引き受けてしまったのは、まだ良いが 毎日日誌の記入をしなければならないのは骨が折れる。おかげで、昼休みだというのに全く休めた気がしない。集中する湊に話しかけてくるような友人もいなかった。高校も2年生に進級し、元々少なかった友人とはクラスが離…