【創作BL】人気者の幼馴染【#003】

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「湊、お昼ご飯一緒食べよ〜」
隣のクラスから蓮がやってきた。
蓮と湊が一緒にお昼を食べるのは最早当たり前になっている。
それでもこうして毎日、わざわざ自分の教室まで来てくれる彼が愛おしかった。
しかし、周りの視線も若干気になる。
クラスでは浮いた存在の湊は自身の肩身の狭さを十分自覚していた。
対照的に、友人の多い蓮がなぜ自分とつるむのか、幼馴染という関係を知らない第三者にすれば謎でしかないのだろう。
クラスの人と食べたら?と湊が勧めたこともあったが、蓮は何がいいのか毎日欠かさずこの教室にやってきた。
「ん、待って。日誌書いちゃうから」
湊は日誌を机に広げた。これは学級委員としての責務である。
「相変わらず真面目だね。これなら後期も学級委員確定かな?」
蓮は日誌を覗き込むようにして言った。
軽いトーンで発された言葉は、湊には少し重く感じられた。
「…うん」
「嫌なら断ってもいいと思うけど?」
「…まぁ、ね」
学級委員はなりたくてなったわけではなかった。
学級委員はやることが多い。何かと先生に呼び出されたり、雑用を頼まれたりする。
正直もっと勉強に時間を割きたかった。けれど驚くことに、クラスの大半が湊を学級委員に推薦したのだ。
それは湊が支持されているから、というわけではなかった。
湊が学級委員になれば、このクラスで横行しているカンニングの件や、授業中のゲームや携帯の利用など、そういった風紀の面を指摘できないとわかっていたのだろう。
このクラスの一軍と呼ばれるグループが主に素行が悪かったが、
その中の一人に、湊は弱みを握られている。
「湊の今日のお昼は何?」
そんな内情を蓮は知る由もなく、会話を続けた。
「今日は、メロンパン」
湊が返答すると、蓮の口角が下がった。
「げ、またメロンパン〜?飽きない??」
「今日のは購買のやつだから」
「いや、メロンパンはどれも一緒でしょ」
「一緒じゃないよ。購買のは安いし、大きい」
湊はメロンパンのほんのりした甘さが好きだ。
最近のマイブームなので、見かけるとつい買ってしまう。
母親は昼食の中身まで指定してくることはなかったので、それは助かっていた
「それよりどうしたの?その紙袋」
蓮は机の上に紙袋を置いていた。柄もなく質素な茶色。
貰い物だろうか。
「あー、これ?ハロウィンだから〜ってクラスの女の子たちがお菓子くれたんだけど…」
蓮は昔からモテる。本人が気づいているのかはわからないが、バレンタインなんかは抱えきれないほどもらっていたのを見たことがある。
女兄弟がいるから、女性の扱いも慣れており、それも理由の一つなのかもしれなかった。
少し考え込んでしまった湊に、蓮は重ねるように口を開いた。
「あ!心配しないで!♡俺は湊に一途だから♡」
「言ってろ」
「えー、つめたーい」
唇を尖らせた蓮に、湊は聞かずにはいられない質問を投げかけた。
「その…食べるのか?それ」
湊は小声だったが、蓮には届いたらしい。
んー、と少し考える仕草をしてから蓮は答えた。
「食べないかな。妹にでもあげるよ。俺、ダイエット中だから」
これは最早蓮の常套句だ。
「いつも言ってるよな、それ。この間一緒にクレープ食べたろ」
「湊と一緒に食べる物はカロリーゼロなの♡」
「なんだそれ」
どこまで本気なのか、時々掴みどころのない応対に、湊はため息をついた。
そのため息に紛れ、蓮が何か言ったようだったが、雑音に混ざってしまった。
「ん?なんて?」
聞き返すと、蓮は軽く微笑んだ。
「ううん。お昼食べよっか」
大した内容ではなかったのかもしれない。
湊は日誌を簡単に記入に、閉じた。
「俺、裏庭で食べたい」
「湊、裏庭好きだよね」
「人が多いの、好きじゃないから」
本当は、クラスメイトの視線にも耐えかねていた。
このクラスにも、蓮の顔ファンというやつがいるのを知っている。
カースト下位の自分と蓮が話しているのが気に喰わないようだ。
少し寒いかもしれないが、裏庭なら人もほとんどいない。
それに、やっぱり、誰にも邪魔されたくなかった。
「お待たせ、蓮。行こ」
湊は刺さる視線に気づかないふりをした。